倉田良成
砂をあるく 海岸線を断ち切って つながらぬうた 烏賊や 鉈 稚魚のむらがりのうえにうごかない 雪の兆し そらのあみめはまぶしくて 流れ入る夜の奥で私はみみにする はりつけにされた下宿のドアの 蜩(かなかな)の紫紺 売声にしるく応える朝焼けに ふたたび みたび 泥は移った 日月の円を隔てて犬追うもの もやす草木の火は浅いいろどり その秋のたいらぎ くろい空中でみなし児をたたく 風や 藁しべにおくられて 市場の孤独に寄ってゆけば たちまち水蒸気をあげる夥しい革 橋は遠く みしらぬ大河に沿ってあるく