時計機をこわしながら熱くなる
少年期のリュックから
ひとつぶの塩
氷ったままの火を採りあげる
眼をつむると炉が視え
間近の冬日よりも冷える腸(はらわた)
この朝のとどろき……
落入ればやがて
濁り河
投げだす足を遠くして
(一秒は暗い)
春のように
踏みわたる水底
往ってもどらない
鳥目がちに示される夕暮の流体に
徐々に揺らめいてくる
樹は 樹のままだ
ことしの短い紅葉の環のなかで
ほのかに迸る花火を釣り上げた?
恐い顔で近づいてくる母がいる
庭に呼ぶ声
植えるなら菊
接種の匂いをたてて降りる霜
「私もときおりは散歩に出る
暖かい日には過去の前面が青空(そら)になる」
地図を燃やして
全山に触れる
画のなかの人物は私ではない
雨を嫌って飛ぶ鷹の滴
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