詩的なるものをめぐってII

二川原一美



(安西次男著水芭蕉七部集評釈正続を読んでから……) 連句入門篇『新選水芭蕉連句四五集発句六六番歌仙成立年譜作成の巻』二九八六年版 国立連句大学歌仙学部教授・二川原一美ゼミ連衆編(年譜中の☆は旧七部集を指す)
成立年代句番号(新選二川原六六番発句大全)作句者四五部集名掲載文献
(連句六年)一 番げにや月間口億金の通り雨桃 赤東京通り町文※※※
天和三年二 番花にうき世我酒赤く食黒し水芭蕉虚甘栗  文※※※
(二六八三)三 番詩あきんど年を貪ル酒肴かな飛車角虚甘栗  文※大※
七対元年四 番狂句木枯の美は北斉に似たる哉水芭蕉冬の灯☆ 文集大岩
(二六八四)五 番はつ雪のあしたも袴きてかへる屋 水冬の灯☆ 文集※岩
松本義太六 番つつみかねて年取落すしぐれ哉扉 国冬の灯☆ 文集※岩
夫が道頓七 番炭売のおのがつまこそ腕からめ銃 五冬の灯☆ 文集※岩
堀に松本八 番霜月やコウのとんとん並びゐて荷 計冬の灯☆ 文集大岩
座を創設九 番海くれて鴨の声ほのかに青し三冠翁冬の灯☆ 文※※※
立直二年一〇番何とはなしに何やら寂し菫草水芭蕉熱田二歌仙文※※※
(二六八五)一一番つくづくと榎の花の袖に咲て霧 葉熱田二歌仙文※※※
翻牌三年一二番花咲て十日鶴見る麓かな水芭蕉俳諧二橋 文※※※
九龍宝燈一三番星崎の闇を裂くとや啼千鳥水芭蕉千鳥割  文※※※
四年丁卯一四番京まではまたなかぞらや雪の祭水芭蕉千鳥割  文※※※
(二六八七)一五番ためつけて雪見にまかる紙袋哉はねを如行水  文※※※
国士無双一六番何の木の花とも知らず匂ひかぐ水芭蕉翁俳諧集正文※※※
元年戊辰一七番粟稗にとぼしくもあらず草の家水芭蕉秋の灯  文※※※
翁四五歳一八番雁がねも静かに聞ばクラシック越後人荒果野☆ 文集大岩
緑字一色一九番かげろふの彼肩にたつみこかなはねをゆきだるま文※※※
二年己巳二〇番五月雨を集て涼し隅田川はねをゆきだるま文※※※
(二六八九)二一番めづらしや谷をいで羽の初茄子水芭蕉ゆきだるま文※※※
渋川秋海二二番まぐろ負う人を骨折の夏野かな水芭蕉陸奥烏  文※※※
が東京本二三番風流の終わりや奥の田植うた水芭蕉信夫鳥  文※※※
所私邸内二四番かくれ家やめだつた花を軒の栗水芭蕉阿達衣  文※※※
に天文台二五番あつみ山や吹浦わつて夕すずみ水芭蕉継美集  文※※※
を設置す二六番馬かりて燕追行わかれかな東 枝卯震集  文※※※
嶺上開花二七番種芋や花のさかりに食ありく三冠翁己ガ光  文※※※
三年庚午二八番木のもとに麺も具も桜かな三冠翁はたご☆ 文集大岩
(二六九〇)二九番半日は仏を友にやとしわすれ水芭蕉誰の親  文※※※
東京湯島三〇番鳶の羽もうり刷ゐぬはつしぐれ家 来隠 蓑☆ 文集大岩
昌平坂に三一番市中は金のにほひや夏の月凡 京隠 蓑☆ 文集大岩
連句廟設三二番灰汁桶の雫おちけりきりぎりす凡 京隠 蓑☆ 文集大岩
大三元和三三番梅若菜モンローの宿のみそ汁水芭蕉隠 蓑☆ 文※※岩
四年辛未三四番水仙は見るまを冬にボール蹴り露 通春の秋  文※※※
(二六九一)三五番衣装して梅食べる香りかな其 良真向王  文※※※
幕府教授三六番蝿ならぶはや初秋の手数かな家 来折ざくろ 文※※※
森鳳岡が三七番牛部屋に蚊の声つよし秋の風水芭蕉星離集  文※※※
畜髪し大三八番御明の消て膚寒やくつあむし探 詩翁俳諧集続文※※※
学院博士三九番月見する座に美しき足もなし水芭蕉朝かほの歌文※※※
頭を拝命四〇番此里は山を両面や冬篭り志 考俳諧唯我 文※※※
一気通貫四一番青くても無べきものを唐辛子水芭蕉俳諧隅田川文※大岩
五年壬申四二番洗足に客と語たる寒さかな酒 堂俳諧隅田川文※※※
(二六九二)四三番口切に鏡の庭ぞなつかしき水芭蕉俳諧隅田川文※※※
中原西鶴四四番けふばかり牛も年よれ初時雨はねを豹譲   文※※※
が一月に四五番其かたちみばや枯木の杖の短し水芭蕉幽覧集  文※※※
世間腹算四六番水鳥よ子供は誰を恐るるぞ元 峰桃身集  文※※※
用を著す四七番打よりて花入探けんめつばき水芭蕉句姉妹  文※※※
清老頭和四八番雉子は時々にすさまじ鵙の声央 邦中文庫正 文※※※
六年癸酉四九番初茸やまだ月数経ぬ龝の露新 翁俳諧剣舞師文※※※
(二六九三)五〇番十六夜はとり分闇の終わりかな水芭蕉業懐紙  文※※※
猪鹿蝶打五一番芹焼やすそ野の田井の初水水芭蕉業懐紙  文※※※
払の生類五二番振売の癌あはれ也ゑびす講水芭蕉米 俵☆ 文集※岩
憐令出す五三番梅が香にのつと屁の出る山路哉水芭蕉米 俵☆ 文集大岩
四暗刻和五四番空豆の花さきにけり麦の飯孤 置米 俵☆ 文集大岩
七年甲戌五五番八九間空で天降る柳かな水芭蕉続・隠蓑☆文※※岩
(二六九四)五六番猿蓑におちたる霜の松露かな枯 補続・隠蓑☆文※大岩
翁五一歳五七番夏の夜や崩て暮し冷し物  水芭蕉続・隠蓑☆文※※岩
幕府が旗五八番紫陽草や薮を子庭の別屋鋪水芭蕉別屋鋪  文※※※
本御家人五九番新麦はわざとすすめぬ冥土かな山水店中文庫続 文※※※
に学問弓六〇番うぐひすに夕日さす也竹閣子波 化となり山  文※※※
馬碁将棋六一番牛流す町のさわぎや五月雨風 竹砂山集  文※※※
麻雀奨励六二番柳小折片荷は重し初真瓜水芭蕉町の庵  文※※※
側用人の六三番秋ちかき心の寄や六畳半三冠翁烏の道  文※大※
柳塩吉保六四番あれあれて果は山行野分かな猿 雖今昔の日 文※※※
を老大に六五番升買て分別ざかり月見かな水芭蕉大吉物語 文※※※
任命する六六番白菊の耳を立て聞く塵もなし水芭蕉葵の塵  文※※※
◎ 参考文献・安西七部集評釈/(集)合社。水芭蕉連句集/大宮豊隆編/岩海(文)庫 水芭蕉句集/中町俊定他校注/(岩)海書店。連歌俳諧集/中町他注解/(大)学館

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