さよなら東京

藤田晴央



牛乳を飲む わたしの喉を見て トンネルに入ったね という二歳の子が 車窓に座っている 都市のトンネルを 風が流れている あなたの体の やわらかいトンネルに目をこらすと さらさらと 水のように光る傷が流れている 地の中の川に ぼうっと光る 幾時代もが流れている 見えるばかりの すくえない水 母が横たわれば 坊やを手離す街 轟音の街の下 列車は無音で動き出す さよなら 立ちつくして さよなら わたしの東京が わたしのトンネルに 入ってくる

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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