マリヤの隙間

清水鱗造



僕は植物を信じる その水を信じる そのようにして僕は何かを守ってきたのだ 僕は路地のミセバヤを信じる 遠い浜辺の多肉植物を信じる 僕に当たる光はその限度を知らない ほとんどニクロム線のように 僕の半顔は発光する そして マリヤの隙間 マリヤの隙間 銭苔が広がった中庭 その湿った隙間 僕は青い階段を上る 階段を上る 昼下がりの太陽がケロイドのようだ 静かな血圧の降下 マリヤの隙間 僕のすぐ後ろに来た人が 神の名をつぶやく その顔は零度だった 僕はそれがなぜだか知らない 僕はそれがなぜだか知らない

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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