ころげる石

清水鱗造



遠い電話線の向こうの声 クラゲの洪水 ぼくはクラゲに巻かれてる ぺっ ぺっ ぺっ ぼくはそこらに唾を吐く 黄色い煙草 紫煙草 煙は部屋に充満してる 電話は電話は混線してる ミミズの洪水 のびたり縮んだり のびたり縮んだり みんな裸に みんな裸に コールタール塗りつける 四角い缶から塗りつける ぺっ ぺっ 釣りをしようぜ 人魚がかかる 釣りをしようぜ 陰部がかかる 四角い海から釣り上げろ 四角い海から釣り上げろ ぼくらのごちゃまぜの灰皿に ごちゃまぜ絵具塗りたくる ぺっぺっぺっ ここらにマグロのでかい腹 ここらに魚のでかい腹 コールタールにまみれてる 刷毛で塗れ 刷毛で塗れ 陰毛むしれ 陰毛むしれ どんどん流れる遠い雲 どんどん流れる遠い雲 蹴飛ばせ雲を 蹴飛ばせ虹を ぼくの回路は腐ってる きみの回路も腐ってる みんな腐乱した人形だ みんな四角い海の人魚だ おお風 でたらめな音楽を奏でる風 ぼくの背中をおし続ける風 腐っててそれで新鮮だ 腐っててそれで豪華なケーキ 腐っててそれで立派なオートバイ 腐っててそれで走ってるミミズだ クラゲだ ぺっぺっ ぺっぺっぺっぺっ 唾を吐け 唾を吐け ころげる石ころげる石 咲けよ石 咲けよ石 暴発しよう石 ころげる石 ケツの穴に指つっこんでぐにぐにしてやるよ 毛は剃ろう きみの毛もぼくの毛も みんなの毛も剃ろう みんなツルツルだ みんなみんなツルツルだ 春の散歩は楽しいな 夏の散歩は楽しいな 秋の散歩は楽しいな 冬の散歩は楽しいな みんなみんな三次元 みんなみんな立方体 みんなさいころ みんな角砂糖 みんなみんな腐っているよ みんなみんな新鮮なんだ ころげよう ころげよう 石 ぺっ

(註:この詩は床に紙を敷いて、唾を吐きながら朗読されることを想定している。)


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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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