禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる
聖女たち――バタイユの遺稿から
著訳者・吉田裕
書肆山田
定価 二〇〇〇円(本体一九四二円)
【目次】
●「聖なる神」遺稿 ジョルジュ・バタイユ/吉田裕訳
「エロチシスムに関する逆説」の草稿
聖女
シャルロット・ダンジェルヴィル
●淫蕩と言語と――「聖ナル神」をめぐって―― 吉田裕
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希望はまだある。
希望回復作戦
辻仁成
集英社 定価一二〇〇円(本体一一六五円)
とにかく時代がまた始まった
生中継される戦争の時代
僕は缶切りを買いに
彼女と連れ立って
近くのコンビニエンスストアーに向かった
彼女は避妊具も買ってね
と囁いた
ああ、なんて政治的
(〈希望回復作戦〉より)
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蝶はとびさる
石のなかの偶然に
永遠にのこされて
(〈石〉冒頭)
私の洛中洛外図から
倉田良成
如水舎 定価一八〇〇円(送料込み)
【著者紹介】1953年、川崎生まれ。1973年ユリイカ1月号の「新鋭詩人作品特集」に「睡眠譜」を発表。白鯨3号に「視えない廃屋で」、同6号に「回想記」を発表。詩集「歩行に関する仮説的なノート」(1972年)、「旱魃の想い出から」(1977年)、「私の洛中洛外図から」(1992年)。
(著者に注文して下さい。著者住所:〒222 横浜市港北区富士塚2-28-16 第二幸和荘一〇一)
解剖図譜
築山登美夫
TEC 定価一六〇〇円(送料込み)
*
……その壁のいたるところから孔がひらき
べろべろと水がしみだしている
夜ごと見知らぬ愛人を抱きしめていると
彼女は透きとおり
しだいに骨ばかりになって
はりだした体をうす青く滲んだ絨毯に沈め
液化した髪をひろげてゆく
私はほとんど形骸化してしまった
洩れてくる唖の光をかぶって
どこへも転調できなかった体を
自壊した風景のなかにさらしている
逃げ去るかたちに手足は泳いで
もう何も想像することはできない
ただ覚醒の皮を何枚もはぎとる眠りがあり
眠りのなかに何枚もの壁があって……
(〈夢語り 三つの断片〉より、第一の断片)
【著者紹介】1949年10月生れ。詩集『海の砦』(82年・弓立社刊・1400円)、『解剖図譜』(89年・TEC刊・1600円)。
【近況】対幻想、家族、といったものの変成に、たてつづけに直面して、いろいろなコトが視えてきたようです。そんななかでコドモをかわいがり、ゆくすえに、一喜一憂しています。本のオススメは山下悦子の快著『尾崎豊の魂』。生とテクストを兇暴にむすびつけた詩を読みたい!
(著者に注文して下さい。著者住所:〒140 大田区北千束2-15-12-904)
白蟻電車
清水鱗造
十一月舎 定価一五〇〇円(送料込み)
穢れを通して生きていることの意味を探るというのはかなり勇気の要ることだ。清水鱗造はいまそれを敢えてやろうとしている。――鈴木志郎康(帯文より)
蟻の文字がぎっしり詰まった丸まった新聞紙が
ボッと発火する
吉凶吉凶吉凶…と燃える
家系を満たす甘い雪崩…と燃えている
凌辱するものは味方でも撃て…と燃える
菊が硫酸に浮いている
声がただれてくる
逆円錐の渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
百平方メートルの皮膚がいっせいに鳥肌立つ
(〈渦群〉より)
(著者に注文して下さい。著者住所:〒154 世田谷区弦巻4-6-18)
布村浩一詩集
自家版 定価一〇〇〇円(送料込み)
九〇年代の喩の行方を鮮烈に告げる!
二つの ぼたん
鳥をつかって漁をする
魚売り
おちていく ふたつの
火花
花火は明るくて
泳がない
沈んでいく音楽にのせて
オルガンの音楽にのせて
オルガンのおちていく弾き手
だいじょうぶ
まだ
稲は食べられる
おちていく 二つの
蚕
祭りのなかの
合図のように
とおく
村の呪文の
なかに
いる
駆けていく距離の
小さな軽い足
とおざかっていく
船の上の 息を吐く
兄妹
(〈二つの ぼたん〉)
(著者に注文して下さい。著者住所:〒186 国立市西1-10-3 浜田方)
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