躊躇(ためらい)

園下勘治



仮の世に煩悩だけがしんじつ 時計の針も 石庭の悟りも当てにならない 素足で歩くきみの回廊 心も肉に変わるから 木の葉の揺らぎ、一千年の陽溜り この祝福に耐えねばならぬ 風に乗って、川向こうから聞こえてくる 子守歌には耳をふさげ たとえつま先が水に濡れていても 波と波の結び目に紅い花びら もう戦いの相手さえ思い出せないけれど 心はやわらかいままにして この世の祝福に耐えねばならぬ

(連作・死のレッスン 3)


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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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