冬の月

長尾高弘



夢のなかで的を狙う ドン ドン ドン ことごとく外れる 夢ってやつはいつでもそうだ 憤然として目覚める 身体がこわばって重い おまけに えらく寒いではないか そこでまた寝て 夢を見る * いや 寒いからといって眠っているわけにはいかないのだ ふとんから身体をメリメリメリと引っぺがし あらゆる先端に血をシュワシュワシュワと送り込む しびれるように新しい朝 (さて 今日は何をやらなきゃならなかったんだっけ?) そして 私は夕方の神保町を須田町に向かって歩いていた 朝が寒ければ夕方も寒い デコボコのビル群に灯ったライトは夕空ににじみ そのすぐそばに大きな月が浮かんでいた 地面に近い月はなぜか大きく見える その月を見ていたら 地球は丸いんだなと思った 月の神保町からも大きな地球が見えるだろうか?

[ホームページ(清水)] [ホームページ(長尾)] [編集室/雑記帳]
エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
[No.13目次] [前頁(皮)] [次頁(祭りの終わり)]
mail: shimirin@kt.rim.or.jp error report: nyagao@longtail.co.jp