ローセキ

田中宏輔



外に出ると、幼い子供が、道にしゃがんでた ――何を、してるの 子供は、返事して、くれなかった 黙ったまま、もくもくと、何かを描いている ――どうして、口を、きいてくれないの ぼくは、子供の、小さな影を、踏んだ 踏むと、ぼくは、手に、ローセキをもって しゃがんでいた、足もとに描かれた、宇宙船や 怪獣たち、とても、なつかしかった なつかしかったけど、ぼくには、描けなかった 立ち上がって、ぼくは、子供の姿をさがした どこにもいなかった、どこにもいない ローセキが、ぼくを捨てた、ぼくが 捨てられた、白い道には、だれもいなかった

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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