引っ越し

布村浩一



黄色い花が咲いて それは5つの花を持った花 刈り取ってもうぼくの自転車の じゃまをしたりしない いつも枯れている木が 花をつけている ピンク色と新しいピンクと 緑のまじった色 引っ越ししてしまった屋根の上に 朱色の花粉が落ちている 部屋にはホコリがいっぱいで ぼくはただ見ているだけだった 十年間もたまったホコリなんて 1cmぐらい 折り目を合わせるため 空と空がぶつかる 思い切り走って帰ってきた自転車は 息がない フランスにいる友だちの妹が 会いにきてくれという その背広が 折り目を合わせる 解決しなかった 解決しようとした あきらめる空は ぼくのすぐ前 近づきも遠ざかりもしなかったホコリと 十年間の記憶 引っ越しするときは ニレの木の下をとおる

[ホームページ(清水)] [ホームページ(長尾)] [編集室/雑記帳]
エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
[No.14目次] [前頁(大山児童食器店のうた)] [次頁(今を超えないように)]
mail: shimirin@kt.rim.or.jp error report: nyagao@longtail.co.jp