最初は一人

長尾高弘



最初は一人だった 手の指は十本 足の指も十本 たったそれだけだったから 不安だった 自分で決めたことだが いつまでも同じところに一人で立っているのは 辛かった それでも時がたつにつれて 手には葉がつき 足からは根がのびた そしてある日 二人になっていることに気付いた 話しかけはしなかったが 一人ではないと思うとうれしかった 手の指は二十本 足の指も二十本 二十本に葉がしげり 二十本から根が広がった 今はたぶん五人くらいになっている 話しかけはしないが 一人ではないということを いつも感じていられる こういうのを満足していると いうのだろうか

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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