乗物

園下勘治



ひとの世のあやまちはひととひととをつなぐ 霧の中のゴムボール投げのように 互いに煩悩を返礼する 愛が手段の性と愛が目的の性 まちがえば理解しあえる 遺伝子のひとり芝居 魂の乗り物をみがけと誰に言われた 現場を知らないシンカーのように うそつきは決して汚れない ひとはひとの中にしか罪が見えない 座席のない乗り物をみがいている だから魂の在りかが見えない 乗り物は行き先も告げずに出発する 憎しみも悲しみも置き去りにして

(連作・死のレッスン8)


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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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