幽か血の香りがする
嵐が近づいている
すでに捲れあがり発火する書物
しずかにしかし次第にはやく
離陸を開始する草稿
炎となりゆくためにあった文字たち
あれら直線曲線の簡潔な華から
深さへと燃え上がる青空
沼はなおも停滞の象徴であれ
ことごとくそこを離れる雲らは
色をとうに落とし加速する
無効へと成就する預言書
やがて灰として舞い落ちてくる者らは皆
いまを十分に悶えゆがみ燃えゆけ
黒い炸裂をあまねく漲らせよ
巨人の堅牢な背骨もやわらかく煮込まれて
完璧であれ、断絶、分断、崩壊
廃墟さえ残らない清潔な白砂の土地に
存在も根拠も持たぬ宇宙よりの風が
ひとり、次の幕の始まりを告げる
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