近況

吉田裕
人間には、理屈づける前に自分の直覚による決断があるのだろうか。バタイユの発端に向かって遡ってきた。そこには物質性への恐ろしいような臭覚があると感じられるのだが、それがさらに深く、どこから来たものか、よく分からない。そのようなことは結局分からないことなのかもしれないが、それでもどのあたりで分からなくなるかをもう少し元のほうまで確かめてみたい。

築山登美夫
「Booby Trap」には久々の登場ということになります。昨年起こったこと――それがどのように揺れもどすのか、が今年は問われているのでしょう。世界とじぶんのあいだに防御の緩衝地帯をもうけて、ぼんやりと薄い表出の構築をくりかえすといった方法ではどうにもならないのではないでしょうか。いまTVを見ていたらニュースショーのゲストにロッド・スチュアートが出てきて、復興に努力する神戸市民の姿は英雄的だという意味のことを云っていました。昨年の重大ニュースでは世界中で震災・オウム事件・金融不祥事が上位にランキングされています。図体ばかり大きい化石のようになってしまっている不作為の権力を日本人がどうのり超えるのか、に来世紀の運命がかかっているといっても過言ではないのでしょう。共感できる雑誌がとくに詩のメディアでは少なくなってしまいましたが、しばらく以前からの『樹が陣営』と大阪から最近出ている『BIDS』はぼくの関心にいつもふれてきます。それ以外でのオススメは『宝島30』と『サンサーラ』でしょうか。いいかげんさの価値はうまく保存しながら、態度保留のあいまいさを今年こそ打破したいものです。(96/1)

田中宏輔
本作を書き終えたのと同時に、ショパンの『マズルカ・イ短調Op.67-2』の演奏が終りました。ウラジミール・アシュケナージの『ショパン・ピアノ作品全集』のCDで聴きました。本作の題名と同じように、「めちゃくちゃ抒情的」でした。そう言えば、きのう、付き合いかけている男の子と、「Shall we ダンス?」という映画を見て、その子から、「田中やて〜、あっちゃんとおんなじ、デブや〜」と言われて、プイッと、すねてやりました。田中という役名の役者は、少なくとも120キロはありそうでした。ぼくは、せいぜい100キロしかないので、ほんとに腹が立ちました。

倉田良成
私事になりますが、このたび結婚をしました(断っておきますが、初婚です)。公私にわたり、猛烈に忙しい時期はなんとか乗り越えたので、これからはこころを入れ替えて(?)中断している芭蕉論にとりかかろうと思っています。なにか、これまでとは違った展開になるような気がしている――というのは欲張った思い込みでしょうか? 冬ざれの酒に味噌ある最明寺 解酲子

長尾高弘
最近、プログラムの面白さに今さらながらにはまっています。プログラムはかならず予想した通りには動いてくれません。なぜ動かないのかを考えていくうちに自分の誤りがわかります。そのわかったときの快感がたまりません。

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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