戦場跡

駿河昌樹



夢を語るひとびとの みにくさ 枯れ草うつくしく残して 去っていったもののふたちは 弾痕ばかり 粗い壁に残して 家を純粋に家となして こんな戦場跡にしらじらと がらんどうの家を残して 文明はいま どこを吹いているのだろう わざわざこんな 見渡すばかりの枯野まで来て どうしたのだろう わたしは 青い砂をほそく 糸のように落とし続けて 八月 毎夜おんなの霊が立つ 立つという 玄関から見ると ひとけなさのゆたかさ 砂漠に生まれて 砂漠に死んだ頃のことなど ひさしぶりに思い出して いま少し この転生を継続させるため 戻る もしそれを 戻る、と呼び そこを 自国、とたわむれに 呼べるなら

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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