硫黄のにおい

清水鱗造



くねくね曲がる道を車は走る 小雨の湖畔 老女は小さく後部座席に たたずんでいる その 甘受して刻んできた日月 けっして憤怒はおもてに出ることはない ゆっくり動くワイパーを見る男 じつに硝煙に似た 硫黄のにおいは 老女のネガの映像を いくたびも焼き付ける わたしの世代から何度も 硝煙は 上がるだろう

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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