例の黒山

夏際敏生



ところで例の黒山沿い 空へと途切れてゆく大通りを 臆面のにやにやする映像に並び 乳の切れた胸襟を閉じて 複数形の母がたゆたっていく どのコーナーでも旗が卷かれている この手の肉体離れ 寒さが冬の麦に応えるように 人間の目に応える人間の目 犬儒を食う犬がいるかどうか すだく氷も祭りの夜の思い出にすぎない 建築のシルエットにおいて アパシー熱も冷まされている よくテレビの寿命が云々される 食人鬼が食中(あた)り この面も銜え込んでやれ 空生まれ板育ち 霜に取り持たれた二人 お座なりに隣った星座なのだから 言葉尻の割れ目に座る女を置いたら サンダルつっかけて きらきらする戸外へ襤褸けていけ すぐそこのグロサリーまで

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
[No.25目次] [前頁(解酲子飲食 2・3・4)] [次頁(《溶けていく丑》)]
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