愛のキルト

森原智子



北アメリカに わたしのキルトが待っている 「泣く柳」と命名されて 棺をおおう 特別な黒いキルトで 陽に透かせると 無数の昆虫の寝相がみえた 蛙は虫ではないけれど 芭蕉の蛙は虫であっていい くぐもっていったまま存在していることで といえば 女友だちが 「泣く」と「柳」では すこうし つきすぎてはいないかしら そうかもしれない そうでないかも いきなりで悪いけれど あの 制服の金ボタンは 胸の肉より すこうし はなれるようにつけたものだ 浮いているようにね 空へむかって ぶらぶらする想いのことを言うなら すこうし のところで ぶらぶらの人生に 困ったことない? たとえば 地に植えつけた たくさんの 涙の茎のように ふるえても みえることが

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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