飛び魚

清水鱗造



縦横に管が巡る 地面に建物に 建物の影に その管は生体としての街路を生き延びさせるための 生理的な管であり 月や陽 天体と共鳴してどくどくと脈打つ 放り投げられた体は 街の壁の罅に 一挙に吸い取られ 裸のまま加速度を付けて やがて管の中を疾走するものになり 電子雲のようにそこいらじゅうを経巡る 体が尽きることはけしてない なぜならそれは円環を描き 白から濁りに 濁りからまた純白に動く波動運動だから 強い力がコンクリートの高速道の橋脚にかかる それは眼球から圧力となって のたうち回る線形の有機体の過剰な光ともいえる 光はぐちゃぐちゃな波形を描き 高速道を螺旋を描いてぐるぐる巻きにする 何万もの飛び魚はテレビ塔の隙間を通過し 泥のような汁や透明なマント また血や粘液を霧にして飛ばしながら 街を耳の穴の開口部のようにしてちぢに飛び散る 翅の着いた魚たち

[ホームページ(清水)] [ホームページ(長尾)] [編集室/雑記帳]
エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
[No.25目次] [前頁(ぬいぐるみ)] [次頁(Corpus /Grain Side Version.)]
mail: shimirin@kt.rim.or.jp error report: nyagao@longtail.co.jp