清水鱗造
昨夜はこのあたりは 嵐で 小道には折れた枝が 転がっている 靴で枝を除けながら 初めに歩く 「おや 蛇ですよ」 いつもの坂の コンクリートの上に 蛇がゆるゆる 這っている 細い川は増水し いつもは そのあたりに棲んでいるのだろう 女たちはにこにこ笑っている 僕らを先導するように 蛇は坂を登っていく 下には森を通して水田がわずかに見える 「蛇に出会うと」 「なんか、いいね」 突き当たりのベンチに着くころ 蛇は石垣を水脈のように 藪に降りていく