共生

長尾高弘



ひょんなきっかけで外国の人が住み着いてしまった。 道端に捨てられているのを見て、 子供が欲しがったのだ。 相手が外国人なので、 子供がジャックという名前を付けた。 この国の人には、 笑い顔とか泣き顔といった表情はなく、 しゃべる言葉も、 わん というだけなので、 本当に一緒に住めるのだろうかと思ったが、 そこには入るな とか、 おしっこはこっち とか、 こちらが勝手に言っている日本語を 彼は何となく理解するようになってきたし、 彼がうれしそうにしているときとか、 寂しそうにしているときは、 こちらからもわかるようになってきた。 言葉を交わさずにわかることって いったい何なのだろう。

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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