1 イントロダクション



 仰々しいタイトルで始めたが(註: 最初は“東山田紀行”と言っていた。何回か続けたあと、やっぱり恥ずかしいので“東山田散歩”にした)、何のことはない、東山田というのは私が住んでいるところである。山田はやまだではなく、やまたと濁らずに読む。横浜市の都筑区というところに属している。7年前に引っ越してくるまでは、横浜市内に山田などという田舎臭い地名があるとは知らなかった。しかし、地図を見てみると、この辺には田んぼの付く地名が多い。山田のほかに高田、下田、勝田(かちだ)、新田(にった)、新吉田といったものがある。確かに、これらの地名が付いているところには農村風景が少し残っているが、田んぼは見かけない。野菜、花卉、園芸といった畑ばかりである。昔は田んぼだったのだろうか。
写真1-1

写真1-1 富士山が見える方角
写真1-3

写真1-3 富士山が見える夕方
 私が住んでいるところは、港北ニュータウンの一部でもある。ニュータウンというからには、ついこないだまでタウンではなかったのである。実際、私が引っ越してきた7年前は、道を挟んで向かい側にある2軒はすでに建っていたが、私の家の周囲には家がまったくなかった。少し天気がよいと、私の部屋の西側の窓からは富士山が大きく見えた。今も西隣は空地だが、その隣に大きな家が建ち、その先にも竹屋さんの事務所ができた。そのほかにも、富士山までの途中にいくつもマンションが建ったので、富士山はそれらのものの影からこっそり顔を覗かせるだけになってしまった(写真1-1写真1-3)。西側の窓は、西日が入ると本が傷むので、6年間雨戸さえ開けたことがない。
写真1-2

写真1-2 コンビニと県道
 引っ越してきたときには、周囲に店もろくろくなかった。買物をしたければ、4km先の綱島かたまプラーザか鷺沼まで出なければならなかった。ニュータウンなどと言っても家ばかり建って店がないのでは町にならんと文句を言っていた。しかし、7年の間に、まずコンビニ(写真1-2)ができ、続いて本屋、CD屋、釣り具屋、ガソリンスタンド、ファミリーレストラン、ファミリーレストランではないステーキ屋、お好み焼き屋、インド料理屋、蕎麦屋、ラーメン屋ができて、以前と比べれば便利になった。しかし、食料品は相変わらずたまプラーザや鷺沼に出て買っている。4kmも歩いていくのはしんどいが、バスは1、2時間に1本しか走っていない。必然的に車を使うようになる。引っ越してきた当座は車など持っていなかったが、車がなければ何もできないので買う羽目になり、運転も覚えた。車があると、鷺沼やたまプラーザのような遠くだけではなく、ついその先に行くにも車を使うようになってしまう。しかし、広い駐車場を持っている店は少ない。必然的に路上駐車が増える。新しい店ができると、必ずその前には駐車している車が並ぶ。7年の間に住人が増えたので車が増え、店が増えたので路上駐車が増えた。道路は混雑してよく事故が起きる。ヴィレッジがタウンになるというのは、そういうことなのだろうか。
 以前、詩にも書いたが(『縁起でもない』所収「人から聞いた話」)、引っ越してきてから5年間、私はここから都内の事務所まで通勤していた。車は食料品を買うために使わなければならないし、事務所には駐車場などなかったので、電車とバスで通勤しなければならないが、駅までのバスは1、2時間に1本しかない。そのため、行きも帰りもバスの時間を気にしてバスの時間に合わせて生活しなければならなかった。たまさかバスの時刻表が改訂されたりすると、突然バスの走る時間が30分ほどずれたりして迷惑なことこの上なかった。会社は始業時刻、終業時刻で従業員を縛ったりはしていなかったのだが、私はバスに縛られていた。2年前に会社を辞めて家で仕事をするようになったので、ようやくバスの時間から解放された。詩のなかでは満員電車から解放されたことだけを書いたが、バスの時間からの解放も大きかったのである。
 しかし、家のなかで仕事をしていると、とかく運動不足になりがちである。髪は減る一方だが、体重は着実に増えてきた。そこで万歩計(ポケットピカチュウという子供のオモチャである)を買い込んで、せっせと歩くことにした。以前からタバコを買うにもちょっと遠くの店まで行くようにしていたが、その程度では万歩計は1万歩を越えない。そこで、ここ数日はちょっと寄り道をするようになった。寄り道をしても万歩計はなかなか1万歩を越えないが、近所でも通ったことのない道がいくつもあることがわかった。車で通る道はどうしても限られてくるし、歩く場合でも、今までは店やバス停といった決まった場所と家の間を往復するだけだったので、通っていない道がいくつもあるのは当然なのである。しかし、そのような道を通ると、自分にとっては思いがけない風景が転がっていたりして意外と面白い。そこで、ポケットピカチュウと前後して買ったデジカメでそれら近所の風景を撮り始めた。写真を撮ってみた以上、誰かに見てほしい。そこで、これが詩かどうかはわからないが、この場で見ていただこうというわけです(註: 最初はHPの“詩的日乗”というコーナーに掲載した)。つまらなかったらごめんなさい。今日は前口上と写真2枚のみ。写真をクリックすると、超巨大な写真(1280×960)を含むページが表示されます。

参考地図: 画面中央が写真1-2の撮影位置)

99/1/14


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