2 山田神社



 新しくタバコを買うためではない散歩を始めるに当たって、行先として最初に思い付いたのは、山田神社だった。幼稚園(とその出迎え)から帰ってきた妻と子供に、今日はまだ行っていない初詣も兼ねて山田神社まで散歩しようと思うのだけど、と言うと、妻は乗ってきたが、子供は出るのをいやがった。セブンイレブンでキンダーサプライズを買ってあげようとか、あれこれ餌を用意したのだが、結局子供はついて来ず、家でポケモンのゲームをしていた。一人で留守番できるようになったのは進歩だが、遊んでくれないのはちょっと寂しい。
 山田神社は、7年前にはよく行った。その頃は車がなかったし、だからといって家にじっとしていると気が滅入るので、乳母車に子供を乗せてよく散歩に出かけたのだが、どこに行こうかといって思い付く場所はここしかなかったのである。子供の七五三もこの神社でしてもらったのだが、そのときは羽織袴に下駄履きの子供を歩かせるのは大変だし、貸衣装を汚すのもいやだったので、車で行った。車で行かなければならないほど遠いところではないが、歩きだとちょっと面倒臭い気分になる距離である。
写真2-1

写真2-1 南山田の小公園
 まず、写真1-1に写っている下り階段を下りて、写真1-2の撮影場所でもある県道日吉元石川線をまたぐ歩道橋を渡る。歩道橋といっても、渡った先は階段を下りずにそのまままっすぐ歩道が続いており、家が建ち並んでいる。車道を1つ渡って幅1mほどの歩道としてもちょっと細い道をさらに真っ直ぐ歩いていくと小さな公園に出る(写真2-1)。このあたりは、私が住んでいるあたりよりも早くから開発されていて、私が引っ越してきたときには、すでに街ができあがっていた。街といっても住宅が並んでいるだけである。しかし、この幅1mの歩道のところは、いい並木道になっていて、当時からちょっと好きだった。ただ、この道はあまりに狭く、写真を撮ると両側の家が必要以上に写ってしまうので、何だか悪いような気がして、ここでは写真を撮れなかった。カメラを持つといつもそうなのだが、何でもないところでカメラを構えていると、怪しまれるのではないか、嫌がられるのではないかととても気になってしまうのである。
写真2-2

写真2-2 ティファニー
 公園に入って右側に抜けると細い車道が目の前にある。ここで左に曲がってしばらく歩くと、すぐにティファニー(写真2-2)というピザ屋がある。ここは、7年前に私たちが引っ越してきたときにすでにあったのだから、県道沿いのどの店よりも古い。しかし、田舎の店にしてはしゃれている。引っ越してきた当座は、歩いて行けるほとんど唯一の店だったので、乳母車を押して山田神社ではなくこの店にやってきたこともあった。
写真2-3

写真2-3 山田神社の手前
 ティファニーの先で車道を1本渡るとすぐに階段が見えてくる。階段の代わりにスロープを使うこともできる。階段の上まで来ると、神社はもうすぐである(写真2-3)。久しぶりに来たが、歩いてみると、意外に近い。しかし、妻を見ると、息を切らしてぜーぜー言っている。どうしたの? と聞くと、私の歩くペースが速くて疲れると言う。だって、速く歩かないと運動にならないんだぜ、と答えたが、そう答えた分、それからの散歩はむきになって速く歩いてしまったかもしれない。帰ってからとても疲れた。
写真2-4

写真2-4 山田神社本殿
写真2-5

写真2-5 山田神社の鐘楼
 最後の坂道を上り切って左側の神社の杜に入り、すぐ目の前の本殿で最初の目的である遅い初詣をした(写真2-4)。もちろん、10日を過ぎて初詣をしている人などほかにいない。そもそも山田神社は普段は無人である。祭や七五三のときだけ、神主さんに来てもらう。元日に初詣に来たことはないので、年越しのときにどうなっているかはわからない。神社なのに鐘楼があるので(写真2-5)、ここで除夜の鐘をついていたりするのかもしれない。家で年越しをしていると遠くから鐘の音が聞えてくる。しかし、近所にはほかに寺もあるので、そちらで鐘をついているのかもしれないし、よくわからない。
 山田には、私が住んでいる東山田のほかに、南山田と北山田がある。西山田はない。今日の散歩で言えば、歩道橋で県道を渡る前までが東山田で、そこから先は神社までずっと南山田になる。この東と南と北が持ち回りで祭をやる。祭には一度だけ来たが、夜店の類が全然来なくてつまらなかったので、二度と行っていない。七五三のときには、本殿に上がって正座して祝詞を聞いた。玉串奉納のときには足がしびれていてなかなか立てなかった。しかし、3つの山田で七五三の該当者はそれなりにいるらしく、何時の部、何時の部というように分けて、交替で祝詞をあげていた。今日はもちろん、本殿に上がることはできないし、上がりたいとも思わない。
写真2-6

写真2-6 山田神社の本当の参道
 先ほども書いたように、山田神社は意外と近く、このまままっすぐ帰ったのでは万歩計がそれほど進まない。そういえば、本当の参道(写真2-6)を通ったことがないので、通ってみようよと妻に言うが、家とは反対の方向に行ってしまうというので却下される。私たちが通ってきたのは、言わば裏口のようなもので、本当の参道は入口がどこにあるのかわからないくらいに長い。そこで、南山田の住宅街を歩いていくことにした。考えてみると、南山田は神社までの道しか歩いたことがない。つい近所でも、初めて通る道は面白い。あの家は大きいね、こっちの家は煉瓦調で凝っているね、などと言いながら歩いていると、あっという間にその道は終点になっていて、そこは参道の入口だった。参道の入口は中原街道に面しており、市営地下鉄のセンター北駅、中川駅の方に通じる道が直角に突き出している。どちらの道も車では通ったことがある。中原街道ではない方をセンター北駅の方に向かって歩き出したが、参道の入口あたりはニュータウン区域に入っていないので道が細く、その割に交通量が多くて歩いていてちょっと恐い。妻がここで曲がろうよと言ったところで、右に曲がった。しばらく行くと、急な坂道を登る羽目になって、妻だけでなく、私も息を切らしてしまった。
写真2-7

写真2-7 竹林
 坂を上り切ると、道は少しの間、竹林(写真2-7)を突き抜けていた。山田一帯にはもともと竹林が多かったと聞く。この土地で生まれ育った妻の実家に行ったときに、裏山の竹林でとったという筍をごちそうになったことがある。さすがに新鮮でうまかった。その竹林は切り開かれてマンションになってしまったが、そのときにニュータウンの宅地になったところの多くは、もともと竹林だったと聞いた記憶がある。
写真2-8

写真2-8 サレジオ学院裏
写真2-9

写真2-9 たけとんぼ公園から見える第3京浜
 短い竹林を抜けると、サレジオ学院の裏に出ていた。車道をそのまま歩いた場合と比べて、かなり近道をしてしまったらしい。クラブ活動なのか、高校生がサッカーをしていた。試合ができるようなサッカーコートが取れるくらいだから、かなり大きな校庭だが、校舎から見てその先にもう1つ、整備されていない大きな空地があって、これもひょっとするとサレジオ学院の校庭になるのかもしれない。この未整備の空地を下に入れて、センター北方向を撮ってみた(写真2-8)。サレジオ学院の校舎の方に歩くと、車の多いバス通りになってしまうので、そこは避けてバス通りと平行な方向に歩いて行くと山田神社に横入りする階段の下に出た。何かあっけない。ティファニーの方に向かって右斜め方向に歩道が見えたので、そこを歩いていくと公園があった。南山田たけとんぼ公園というらしい。公園の先には第3京浜が見えた(写真2-9)。そこから少し歩くと、「×××ホームはマンションを2階建てにせよ」というような立看板の貼ってある家があり、右を見ると3階建てのマンションが見えた。その家の横の細い道を通ると、行きも通った小公園(写真2-1)に出たので、歩道橋を渡り、セブンイレブンで子供への土産を買って帰った。

参考地図

99/1/16


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