セミの日

布村浩一



あつい夏の空からセミが鳴いて ぼくはスダレの向こうの空をみつめる 汗をポタポタかいて 汗をポタポタながして 暑中見舞いを2枚書いて それから この村の おなじような形をした 屋根をみつめる 二本の電線も 山も むかしと同じ配置 ぼくはむかしと同じ空気を吸っている ぼくは吸おうとしている ぼくは吐きだそうとしている この村とぼくの空気を交換したい 庭のダリヤや 光った屋根や ゆれる高いいちじくの木をみた ぼくは少しずつ交換しだすのだ ぼくと外を この夏の日の仕事は 吐くことと吸うこと 吐け 吸う ぼくは吐きだした 吸いこむ そうしているうちに 夏の日の空気が ぼくのからだに はいるかもしれない 夏の日の汗が ぼくの声からあふれるかもしれない

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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