曖昧模湖のネッシー

夏際敏生



きみの拙文は拝読した きょう、湖水は平らかだ 女たちに伍して 男手ひとつでなんとか沢をキリモリしている 喋々を壁にピン留めする代わりに 床いちめん観葉に資する時を蒔く なけなしの胸ははたいて 性器も失せた木を焚き付ける 刃には葉を、とか打(ぶ)っちゃってね その舌の根の下を水道管はうねり テレビの内外で ニンゲンがめそめそしている 服を着ている 笑いさえしている その上ファチマの糸瓜のと 日本人ったら日本語がぺらぺら! 世界は他界して 蠢かない春、動く自動車 風に揺れる うろの大木 さては肉体分裂症のH氏だ 微笑を荒らげているH氏夫人だ 思想膿漏のその愛人だ なにやってんだ いつも空の下で

Booby Trap No. 23


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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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