ヒドラ

清水鱗造



動物がいる 手足がいっぱいある動物である これはヒドラである 一種の極点にそれらが蝟集したヴィジョンになって 室内燈を点滅させる また植物がある 水の街は整備されて植物たちは 大きな盆に移された 中心の教義がある その言葉は容易に破壊できた そしてさまざまな迷走ともみえる風が 多くの方角から訪ねてきたのだ それは花ではなかった それは〈知〉でもなかった 解決されたものや係争中のものの全体が いまとてつもない快楽にも思われるのだ 〈あるいは〉と思う あるいはこれは局地的な状態なのだろうか しかし始まったものを 誰も抑えることができないということによって その迷走に似た風の集中は支持される 物語が始まるということによって 彼には一種の烙印が押されることは必至だ としても…… 彼の街は建設され始めているのである これは当為であることによる街ではない 異解を分析し分断する街であり 当為を疑う街であることによって その物語は再び風に含まれることが 許されるのである……

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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