倉田良成
(木のぼりの名人 (百の木にとりつく なかぞらをおかして黒雲の湧くのを見るのは たのしい 伐採のまえの日々 蝉のあみめをかいくぐりどこまでも 迷走する裏山の神経に触れるよ 音にみちた斧をつかんで 天に撒かれた鳥の粒 八月の露がむらがるかみなりの庭に 千の眼がくだける いろのないもみじの下で母が待つ暗夜 (木のぼりの名人 (百の木にのぼる 九月のながいくるしみの蛇のすえ 波がしらは起ちあがったまま 人の背丈の露地をぬける 震えのやまぬ青い平地から来て