仮面の女

清水鱗造



明らかに整形をほどこした顔だった そしてそのほかはまったく自然だったのだ 僕はその仮面をはがすことなどできない 僕は青い草の生える地方から出てきたのだ ではなぜ分厚い本を鞄から出すのか それは僕が亀裂に侵入したからだ だれかが強く僕を責めているのに だれかまた別の人が僕を亀裂に促す しっているのだろうか 僕の処世訓 そして僕は堕落する 堕落の円錐に従って上昇する着衣がある 仮面は女の意思だった そのほかは全部自然だったのだ その仮面の曲率に沿って 僕の堕落はある暗い像をむすんでいった それが収斂する朝 水のような僕の陰陽が崩れるのだ たちまちのうちに陰核が陰茎に生長する像が 堕落の円錐の鏡面に 反射するのだ

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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