子供の芝居

長尾高弘



子供を見ているとひょんなことを思い出すものである 子供の頃の私のなかには みんたかとかつんたかとかじゃあたかといった連中が住んでいて あたりが静かになると もぞもぞと動き出して 芝居のようなことをするのである そのみんたかとかつんたかとかじゃあたかは それぞれきゃらくたあというものを持っていて よく出てくるやつもいれば めったに出番のないやつもいる (よく出てくるからといってそいつが好きだとは限らないのだ) 話の内容やそいつらがどんなやつだったかは忘れてしまった いずれ眠って夢でも見ていたのだろう 覚えているのは 騒がしかった雰囲気と名前の一部だけ いつの間にか一人も出てこなくなって そんなやつらがいたことさえ忘れていた それにしても その芝居を見ていた私は誰だったのだろう 今ごろそんなことを思い出す私も

[ホームページ(清水)] [ホームページ(長尾)] [編集室/雑記帳] [bt総目次]
エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
[No.11目次] [前頁(セミの日)] [次頁(詩――本人校閲)]
mail: shimirin@kt.rim.or.jp error report: nyagao@longtail.co.jp