あられ

長尾高弘



朝は晴れていたが 次第に雲行きが怪しくなり 昼食を終えて店を出たときには 街は斜線だらけ 走れ 駅まで20m ジャンパーの襟を立てて 「あられだって」 「あられ?」 「今 通っていった人がそう言ってたわよ」 2人とも 走るのに夢中で あられだとは気が付かなかった 年末のせいか 駅には人がいっぱい 数百人 あるいはそれ以上? これらの人々にもこのようにして あられという単語が伝わっていったのだろうか? あられという単語が脳細胞の隙間に浮かんだり のどの奥を震わせたりしたのだろうか? 他人同士 不思議なことだ 外を覗くと 夏のような厚い雲 今 その真ん中で稲妻が光った

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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