廃家のカマにある内紛の火種のイメージへ

沢孝子



尋ねたところは淫乱と武乱のイメージが格闘する廃家だ 黒糖づくりのカマの液 陶器づくりのカマの土 それぞれの歴史の秘密の扉を押して ずーっと気になりつづけている 島の液のながれ 森の土のもりあがり それらが交わる関係の 内なる無知の問答が始まる それは古代から保ちつづけられてきた 窪みであり 重みであり なんらかの矯正によってしか 真実は明らかにされないだろう 月の便りへは裏切ってきたから 梅の便りには服従してきたから 霊液となった古体が冴えてくるカマよ 偽土となった肉体が狂ってくるカマよ 緊迫してくる民族の内紛の 火種となる要員の炎に照らされる とうきづくりでないさとうづくりを どろどろした土ではないどろどろした液を 竹ヤブに隠れていたい 宝となった黒糖の時代の岩屋で 裏切りつづけた 内なる淫乱のイメージがわきたつ 冷たい風が吹き抜けてきて 月の羽衣の自由の歌の悲しさをかわしていると 近代に閉じ込められていった あの古代の呪文が そよそよと空に舞い上がって 今 何を語りだそうとしているのだろう 宝の島がなしがたべていたピーナツがなつかしい 月の便りに冴えてきて 内なる黒糖づくりのカマがもえる 大和化の淫乱の胸をひらくと どろどろの霊液に 滲んできた物語があり 竹ヤブに吹いてきた冷たい風の 岩屋に隠れていたい 今も泣きつづけて こだわっていたい物語なのだ さとうづくりでないとうきびづくりを どろどろしたろ液ではないどろどろした土を 屋敷へは訪れたい 壷がある陶器の時代の居間で 服従しつづけた内なる石頭の武乱のイメージがさまよう 複雑な空を抱えている 梅が立つ器の形式にある暮らしの厳しさをくぐりぬけると 現代に閉じ込められていた あの伝統の四季が ふれている座の風のつぶてに受けて 今 何を問いかけようとしているのだろう 壷の森そうりょがたべていたイチゴにふるえる 梅の便りに狂った 内なる陶器づくりのカマがひえる 反大和の武乱の心をとじると どろどろの偽土に 透通ってきた古典があり 屋敷で抱えていた複雑な空の 居間を訪れたい 今も気負いつづけて のめりこみたい古典なのだ 尋ねたところは淫乱と武乱のイメージが格闘する廃家だ 内なる秘密の扉をおして 月の羽衣の自由の歌へ 梅が立つ器の形式にある暮らしへ ずーっと気になっている無知なるカマへの問答が始まる 裏切ってきたなつかしいピーナツをたべ 服従してきたふるえるイチゴをたべて もえてくるカマの大和化の胸で 窪みとなっている竹ヤブの時代をひらいてみたい ひえてくるカマの反大和の心で 重みとなっている屋敷の時代をとじてみたい なんらかの矯正によってしか 真実は明らかにされないだろう 隠れていた岩屋で 語りだしてきた古代の呪文があり 訪れていった居間で 問いかけていた伝統の四季があり 緊迫してくる民族内紛の 火種となる要員の炎に照らされる こだわりつづけている物語の淫乱のイメージには どろどろの島の液のながれ さとうづくりの悲しい歌で! のめりこみつづけている古典の武乱のイメージには どろどろの森の土のもりあがり とうきづくりの厳しい暮らしで!

(改稿)


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