煙洞

清水鱗造



しゃがんでいると 影帽子が舗道に長く伸びて 黄色い帽子の男が その先で 煙草の火をもみ消して また一本煙草をとりだして じーっと見ているだけ 尻が赤く染まって 足のあいだから夕日が 探るように伸びてきて 鉄路がほうきの柄になって そこらじゅうで消えている マッチ一本 舗道で擦って 煙を缶からもくもく出して 火ぃつけて 火ぃつけて しゃがんでしゃがんで 火ぃつけて このへん煙洞 煙のなかに黄色い帽子が霞んで見える煙洞

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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