蛙男

田中宏輔



まるで痴呆のように 大口あけて天を見上げる男 できうる限り舌をのばして待っている いつの日か その舌の上に蝿がとまるのを (とまればどうすんの) 蛙のように巻き取って食うんだ (と) その男 舌が乾いては引っ込め 喉をゴロゴロ鳴らす そうして、しばしば オエー、オエー と言っては 痰を飲み込む (ほんと、いくら見ても厭きないやつ) 訊けば、その男 蛙がごときものにできて 人間たるわしにできんことはなかろう (とか) 言って じっと待つのであった (根性あるだろう、こいつ) ぼくはそんな友だちをもってうれしい ほんとにうれしい

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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