二本の筆

長尾高弘



むき出しの二本の筆が 点、点、点、点、点、 を打っていく 太くて長い筆 その筆に思わず目が引き付けられた (だって あまりに見事だったもので) 平行な二行の点、点、点、点、点、 地下のプラットフォームから階段を上り 地上の光のなかに 暖かい春風を受けて 筆のownerは穂先を両手で揃えた (あれ この筆は穂先が上を向いている?) そのとき かすかなにおいが鼻先をかすめた

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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