断章95-4 真っ黒な一ページ 清水鱗造 下のほうに黒い水が池になって溜まっている。作業はとても単純だ、今の概念でなら。だけれども、いつも黒い水に向かって変な旅をしなければならない。これはノイズに似ている。それも遊戯のときのノイズ。 生まれてきたものを平安のなかで成人させたのなら、それはそれで成功なのだが、平安を形作る概念もゆっくりと変遷していく。ぼくは異形をつくらない。それは作るものがただ、生理に依拠しているところにしか根拠をもたないところの意思として。ただそのためにだけ異形を作らない。 黒い水は下方に溜まっている。その表面には今の生活が映されている。そしてたまに冒険する。その集団に向かって。しかし、それに浸る時間はすでに生理に否定される。無尽蔵にある生理の採集物を採りにいくための変な旅なのだ。その後、かんたんにぼくらは別れられるだろう。 黒い水に浸った一ページがあらわれる。ページ数も抹消されている。でも、たちまち白いインクで一面に言葉を記すだろう。 建造の音には平安と不安が交じっている。と同時に遊戯の音には別れの音が交じっている。塩梅しながらそれらのノイズを聴き、固有のノイズを送るだろう。 |