明日香めぐり

荒川みや子



あたたかく膨らんだ土地に入ってゆく 私は私の肉親達と畦道を歩いた 「インディアンサマーだよ。今日は。」 娘は頭に帽子をかむっている 私と血を同じくする母と父と弟と娘 彼等は手をかざして石のまるみに消えてゆく 列をなした他者も過ぎる。野菊のあとだ。 石のまるみから鬼をかかえて 父と母が出てきた 私は伝板蓋宮(いたぶきのみや)跡で二人を待っている 鬼の首をまわせ、まわせ、 まわせ、 私は足を踏み鳴らし 娘は足をつっぱり 弟は声を出さずに古代ビトの大声を真似た 父と母は、前より老いて 石の傍でうずくまっている 土の矩形さえしてきた 二人は手で確かめて 柿の葉でくるんだ御飯を喰べだした 茄子、コンニャク、やまとイモ、牛蒡 ゆっくり陽をたくわえ われわれ家族は膨らんでいった 生けるモノよ 生けるモノよ

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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