Booby Trap 通信  No. 9

禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる
聖女たち――バタイユの遺稿から/著訳者・吉田裕/書肆山田/定価 2000円(本体1942円)

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【目次】
●「聖ナル神」遺稿 ジョルジュ・バタイユ/吉田裕訳(「エロチシスムに関する逆説」の草稿・聖女・シャルロット・ダンジェルヴィル)
●淫蕩と言語と――「聖ナル神」をめぐって―― 吉田裕
歴史の「中心」をめぐって――友人への9通の手紙/私家版(残部僅少)/無料
(著者に直接注文してください。著者住所:〒168杉並区高井戸西2-7-29)
【近況】ものを書き始めてから、十年を越える時間がたってしまった。最初はひどく時間と手間がかかって、膨大な(と言うほどでもなかったが)ノートの反古を作ったものだった。その頃、原稿用紙に向かってペンを走らせている物書きの写真などを見るとうらやましくて、自分も慣れたらああいうふうに文章が出てくるようになるに違いないと慰めた。しかし時間がたってみても、書き方は少しも変わらない。パソコンが出来て、反古と肩こりからは解放されたけれども、書き直しの回数とかかる時間は同じである。これが私の人生最大の誤算?


Pastiche/田中宏輔/花神社/定価2400円
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いくら あなたをひきよせようとしても
あなたは 水面に浮かぶ果実のように
わたしのほうには ちっとも戻ってはこなかったわ
むしろ かたをすかして 遠く
さらに遠くへと あなたは はなれていった

もいだのは わたし
水面になげつけたのも わたしだけれど
(〈水面に浮かぶ果実のように〉)
【プロフィール】1961年、京都生まれ。現在、同志社国際高校数学科講師。『Pastiche』(1993.5刊)は処女詩集。「ポパイ」94.2.10号47ページに顔写真とインタビューが載っています。同性愛を織り込んだ詩も書く。
(著者住所:〒606 京都市左京区下鴨西本町36-1-2A号)
【近況】ノブユキから電話がありました。アメリカの恋人をともなって帰国して、またいっしょにアメリカに行きました。そばにいる奴と英語で話しながらぼくに電話するノブユキに、ぼくの頭はクルクルパーでした。白人のことが大嫌いになりました。
☆編集者注 Booby Trap 特別号1『presence/echolalia』は書店でも注文できますが、著者のところにもありますので、できるだけ直接著者に注文してください。定価700円(送料共)です。


新刊!
ぼくのお城/布村浩一/昧爽社/定価1300円(送料込み)

(書店、または著者に直接注文してください)
おれはいい訪問者だったかい
つよし
じゃあまたと言っておれはおまえとおもえの子供に手をふる
和泉府中の駅でおれは
心がふるえている皮のようなものに包まれているのを感じた
ホームでおまえにもらった週刊誌を読み
タバコを吸った   (〈旅行〉冒頭)
(著者住所:〒186国立市西2-1-12 松野荘101)


新刊!
長い夢/長尾高弘/昧爽社/1000円(送料込み)

しばし手を休めて
彼らは思い出した
地面に手を突っこんで
地面を真二つに
引き裂こうとした時のことを
わずかにできた裂け目は
広がらず
逆に地面にしめつけられた手を
ようやっとの思いで
引き抜いたのであった
(〈平和〉より)
【プロフィール】1960年4月6日生。(住所:〒223横浜市都筑区東山田3-26-16)
【近況】エッセイの方でMacintoshを知らないのでと書きましたが、書いたあとで何かくやしくなり、会社に買わせてしまいました。忙しくてハイパーカード版は当分作れそうにありませんが、このソフトは奥が深くて面白そうです。Internetも、そのMacintoshでアクセスしています。気軽に海外を覗けるというのが面白いですね。たとえば、ベルギーにマグリットのホームページというものがありまして、jpeg形式の画像ファイルを大量に提供しています。運営者は、今秋を目標にそれらの画像ファイルをまとめたCD-ROMを作ろうとしているようです。


沢孝子
(住所:〒560豊中市東豊中町5-2-106-504山形方)


駿河昌樹
(住所:〒155世田谷区代田1-1-5 ホース115-205)


荒川みや子
【プロフィール】1948年6月生まれ。詩集『森の領分』『冬物語1983』。
(住所:〒150渋谷区恵比寿南2-5-1 梓沢方)


白蟻電車/清水鱗造/十一月舎/定価1500円(送料込み)
穢れを通して生きていることの意味を探るというのはかなり勇気の要ることだ。清水鱗造はいまそれを敢えてやろうとしている。――鈴木志郎康(帯文より)
蟻の文字がぎっしり詰まった丸まった新聞紙が
ボッと発火する
吉凶吉凶吉凶…と燃える
家系を満たす甘い雪崩…と燃えている
凌辱するものは味方でも撃て…と燃える
菊が硫酸に浮いている
声がただれてくる
逆円錐の渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
百平方メートルの皮膚がいっせいに鳥肌立つ
(〈渦群〉より)
新刊!
毒草――夏の旅(長編詩)/清水鱗造/昧爽社/定価600円(送料込み)

(著者に注文して下さい。著者住所:〒154世田谷区弦巻4-6-18)
【近況】詩集を立て続けに作りました。稼ぐほうの仕事もあるので、進行はとぎれとぎれでしたが、山を越えたという感じでほっと一息です。Internet に接続して遊ぼうと思いつつ夏になってしまったという感じです。


新刊!
ゼノン、あなたは正しい/倉田良成/昧爽社/定価2000円

(書店または著者に直接注文してください)
中天に赤いクレーンが揚がり、空の奥から覗く眼がある
水が撒かれて建物が解体する夏
しきりにたちのぼる翳のなかを
はげしく煮沸されている坂下の街にむかう
巨きな意思が透明な斧のように頭上に吊るされ
プールの歓声がきらびやかに破壊する八月の青
悲しみのように髪を濡らしながら
すあしの子供たちはふたたび未来のほうへ帰ってゆく
(どこにもない場所へ
私も帰らなければならない)
(〈はるかな場所にむかって寝返りをうつ〉より)
(著者住所:〒221横浜市神奈川区六角橋6-31-6-502)
【近況】引っ越しをしました。山ひとつ越えただけの近所ですが、ぐっと「ヨコハマ」が近くなった感じで、五階の窓からは正面にみなとみらい地区が一望できます。ランドマークタワーやコスモクロック、インターコンチネンタルホテルなどの夜景がとても美しい。だけどマンションなので猫の次郎と別れるのがとてもつらかった! さいわい、引き取り手が見つかったので、そういう意味では幸運なやつです。昧爽社から新詩集を出したことをお知らせしておきます。あれやこれやで「塵中風雅」は今回もお休み。

【編集後記】18号は予定より1カ月半も遅れてしまった。原稿のほうはたくさんあって、うれしい悲鳴というところであるし、活力に応じて発行をまめにやらないとまずいな、とも思っている。さいわいにして、DTP はとても時間の節約になるし、清水タイプライター社にお願いしている印刷の進行なども流れがはっきりしてきたので、日常のテキストの整理をやって計画性をもっともてばだんだん速く刊行できるようになっていくとは思う。今年の前半は阪神大震災、オウム事件と大変なことが立て続けに起こった。たぶん、この夏の心身の疲れはいつもの年と違うように感じられている方が多いのではないだろうか。
 個人的にはいろいろ周りを見渡しつつ、目標である小さな作業をひとつずつ最後までやろうと思っている。じつをいえばこんな心境になったのは最近のことで、雑念を振り切るのは容易ではないことがだんだん見えてきたというだけのことかもしれない。


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