Booby Trap 通信  No.10


禁忌と禁忌の侵犯に人間をみる
聖女たち――バタイユの遺稿から/著訳者・吉田裕/書肆山田/定価2000円

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【目次】
●「聖ナル神」遺稿 ジョルジュ・バタイユ/吉田裕訳(「エロチシスムに関する逆説」の草稿・聖女・シャルロット・ダンジェルヴィル)
●淫蕩と言語と――「聖ナル神」をめぐって―― 吉田裕
歴史の「中心」をめぐって――友人への9通の手紙/私家版(残部僅少)/無料
(著者に直接注文してください。著者住所:〒168杉並区高井戸西2-7-29)
【近況】バタイユについて書きたいのは、神秘主義に近い極度の経験と戦争をも含む生の社会・歴史の経験が書くという行為によって絶対的に結ばれてある姿である。このような結合の様子をこれほどあからさまに見せてくれる作家をほかに知らない。この姿を描き出すためには、まだまだ準備が必要である。つきあってくださることをお願いする。

Pastiche/田中宏輔/花神社/定価2400円
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いくら あなたをひきよせようとしても
あなたは 水面に浮かぶ果実のように
わたしのほうには ちっとも戻ってはこなかったわ
むしろ かたをすかして 遠く
さらに遠くへと あなたは はなれていった

もいだのは わたし
水面になげつけたのも わたしだけれど
(〈水面に浮かぶ果実のように〉)
【プロフィール】1961年、京都生まれ。現在、同志社国際高校数学科講師。『Pastiche』(1993.5刊)は処女詩集。「ポパイ」94.2.10号47ページに顔写真とインタビューが載っています。同性愛を織り込んだ詩も書く。
(著者住所:〒606 京都市左京区下鴨西本町36-1-2A号)
【近況】大下さなえさんが『月カド』で新人賞を受賞されました。すきな詩人が受賞されて、とってもうれしいですぼくも、がんばらなくっちゃ。
★編集者注 『presence/echolalia』(Booby Trap 特別号1)は書店でも注文できますが、著者のところにもありますので、できるだけ直接著者に注文してください。700円(送料共)です。

新刊!
ぼくのお城/布村浩一/昧爽社/1300円(送料とも)

(書店、または著者に直接注文してください)
おれはいい訪問者だったかい
つよし
じゃあまたと言っておれはおまえとおまえの子供に手をふる
和泉府中の駅でおれは
心がふるえている皮のようなものに包まれているのを感じた
ホームでおまえにもらった週刊誌を読み
タバコを吸った
(〈旅行〉冒頭)
(著者住所:〒186国立市西2-1-12 松野荘101)

新刊!
長い夢/長尾高弘/昧爽社/1000円(送料込み)

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しばし手を休めて
彼らは思い出した
地面に手を突っこんで
地面を真二つに
引き裂こうとした時のことを
わずかにできた裂け目は
広がらず
逆に地面にしめつけられた手を
ようやっとの思いで
引き抜いたのであった
(〈平和〉より)
【プロフィール】1960年4月6日生。(住所:〒223横浜市都筑区東山田3-26-16)
【近況】9月に渋谷の西武百貨店が新装オープンしたので、行ってみた。Loft館の店内案内を見るとぱろうるが書いてない。げげっ、なくなってしまったのかと思って5階に行くと、非常に目立たないところに残っていた(以前の場所のすぐ近く)。隣の本屋や画集販売のコーナー、安い洋書のコーナーはすべてなくなっていたので、ぱろうるもかなり危なかったのではないだろうか。詩書は高い。中身を確認してから買えるぱろうるのような店は貴重である。効果があるかどうかわからないが、ぱろうるで買えるものはなるべくぱろうるで買って、応援していきたいと思う。
【編集者記】長尾さんが先月翻訳中と書いた本が出ました。紹介しておきます。
「Microsoft OFFICEによるアプリケーション技法」Christine Solomon著
エー・ピー・ラボ/長尾熏O訳 (株)アスキー発行(1995年10月1日)
ISBN4-7561-1607-8 C3055 P7500E、つまり7500円です。

沢孝子
(住所:〒560豊中市東豊中町5-2-106-504山形方)

駿河昌樹
(住所:〒155世田谷区代田1-1-5 ホース115-205)

白蟻電車/清水鱗造/十一月舎/定価1500円(送料込み)
穢れを通して生きていることの意味を探るというのはかなり勇気の要ることだ。清水鱗造はいまそれを敢えてやろうとしている。――鈴木志郎康(帯文より)
蟻の文字がぎっしり詰まった丸まった新聞紙が
ボッと発火する
吉凶吉凶吉凶…と燃える
家系を満たす甘い雪崩…と燃えている
凌辱するものは味方でも撃て…と燃える
菊が硫酸に浮いている
声がただれてくる
逆円錐の渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
渦(白眼)
百平方メートルの皮膚がいっせいに鳥肌立つ
(〈渦群〉より)
新刊!
毒草――夏の旅/清水鱗造長編詩/昧爽社/600円

(送料込み)(書店、著者に注文してください)
海亀のはるかに広がった夢
有機体の紐や藻の雲に覆われた夢
僕らはそれを刈る
刈る
ただ一刻の夏の温度のために
刈る
そのようにしてバス発着所の惨劇は終わった
(第1連末尾)
【近況】観葉植物や多肉植物が好きで、写真を見たり、育てたりしているのですが、怠け者のぼくはどうしても水やりをさぼりがちになります。かくして、丈夫で乾燥に強い植物たちが生き残っていきます。植物栽培が上手になるにはある程度機械的に時刻を決めて世話をする、というような科学者のような気持ちにならないとだめですね。
(著者住所:〒154世田谷区弦巻4-6-18)

新刊!
ゼノン、あなたは正しい/倉田良成/昧爽社/2000円(送料共)

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中天に赤いクレーンが揚がり、空の奥から覗く眼がある
水が撒かれて建物が解体する夏
しきりにたちのぼる翳のなかを
はげしく煮沸されている坂下の街にむかう
巨きな意思が透明な斧のように頭上に吊るされ
プールの歓声がきらびやかに破壊する八月の青
悲しみのように髪を濡らしながら
すあしの子供たちはふたたび未来のほうへ帰ってゆく
(〈はるかな場所にむかって寝返りをうつ〉より)
(著者住所:〒221横浜市神奈川区六角橋6-31-6-502)
【近況】引っ越しをしてからJRをつかって仕事場へ通うようになりました。すなわち横浜駅から新橋ないし有楽町という経路で、東海道線に乗っています。気づいたのは、いままで遠い無縁なものと感じていた東京駅やそれ以東の街がぐんと近くなったことです。なにしろ横浜から東京駅まで25分たらずで着いてしまうのですから。そんな短い時間だけれども、小田原あたり発の旅客列車の、対面式の座席に座るとなんだかわくわくしてしまいます。子供みたいだと笑ってやってください、四十ヅラさげて。

【編集後記】早くも冬。今年は速く去っていく感じです。有言不実行というか、またしても遅れ気味。不言実行しかないですね。課題を見つけて捌いていきたいです。

本号よりロゴ装飾を星野勝成さんにお願いしました。深謝します
【昧爽社の本について】
十数年前に何冊かこの社名で詩集を作り休業(?)していました。久しぶりに数冊作りました。本屋さんで買えますが、著者のところにもありますので、直接注文されたほうが速いカンパになります。本屋さんで売れたとき入るお金もしばらくたってから著者に還流する形式をとってはいますが、そこのところよろしくお願いします。


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