梅の木にひざまずくとケンムンの木にこの葉落ち

沢孝子



掌に機械がうごきだす 梅の木の先端に吊り下がってくる 鉄のような恋 そのいろは 解けないでいる あの時代の風 いやな想念がひざまずく ばしょう衣がなしが 詠んでいた句のつぶやき 街の交わりや 溝川の争い 傾いてくる胸に泥の家 点滅していた 国のなかの滅びの貌 朝がひざまずいている 鉄のような恋 そのいろの さびの言葉にほてる 解けない 風 梅の木の先端は地獄 腐っていく耳 機械がひびく 泥の家に立ち上がれ 胸にいくつかの応答 争っている街 溝川にみる 亡んでいく貌 交わりあう地獄 国のなかの朝の信号が がーんがーんと打ってきた掌 大和化の句をつくる 梅の木の先端に吊り下がる 腐っている耳 拡大鏡がのぞいた空の星群の沈黙 あらくれの偽装が問う 胸に立つ毒の木の さまよう言葉のわび 湖に散る恋の雪のいろを 拡大鏡の破れた瞳がのぞく 機構につながり この葉落ちて 星群は沈黙する あの白い時代 苦い思念がよこぎってくる スピードをだす権力を問う あらくれの偽装衣で 機構のつながりの 夜の夢の淵に埋まる ふるえている綾 かーんかーん打っていく空の 反大和の句のぬかるみ 散っている雪の恋の 滅びのいろを確かめて 湖の夜をさまよう かいこ衣そうりょが 詠んでいた句に 白い綾をたどり 権力のスピードをのぞく この葉落ちた 滅びる胸のぬかるみ 毒の木が立つ夢の淵に 破れている瞳 鉄のような貌の恋の想念の約束 溝川の機械の掌 立ち上がれない街 うつむく胸の泥の屋根は 国のなかの闇の信号と応答する はてしない古代からの不安 腐っている耳の ハブの心の地獄 海のひびきをかきわける 手早い変り身で 大和の藩の井戸を抜け ガジュマルの木に吊りさがる 点滅してくるさびの言葉にひざまずく ほてるいやな泉のつぶやき ガジュマルの木にハブの心の刺ひろう かたくなな赤土の時代 うつむく胸の泥の屋根に 滅びる島の踊る優しい年月がうねる たえずつぶやく ばしょう衣がなしが詠んでいた句の 溝川に約束する掌の想念 立ち上がれない街の鉄のような貌が 国のなかの闇の信号でうごきだす 腐った耳にある不安 はてしない古代からのひびき 海の地獄の応答となり ひざまずいた赤土のかたくなさに 優しい踊の年月がうねる 滅びる島の手早い変り身がさそう 大和化の句のハブの心 ガジュマルの木の刺をひろう 約束している掌 スピードだす権力をハブの心がのぞく 滅びる胸に島のぬかるみ 古代に埋まる夢の淵 機構につながる綾のふるえたどり ケンムンの木に破れる瞳のはげしい恋の別れ この葉落ち 変り身の早い幼い偽装衣が 木の股をかけのぼる 埋まる魔物の古代の夢の淵 ふてぶてしい星群の沈黙 するりと スピードだす権力かわし わびの言葉のさまよい抜ける ケンムンの木に破れる瞳の自由 恋の別れの魔物の解放の この葉落ち 背の波のするどさで かいこ衣そうりょが 詠んでいた句に 滅びる胸の島のハブの心が火花を散らす 苦い思念の泉がわきたつ 拡大鏡がのぞく反大和の句 白い綾の波の背はするどい 木の股をのぼる記憶のはげしさに するりとかわす変り身の早さ つながる機構をよこぎる わきたつはげしい泉の 潮が引いていく寂しさ 星群の沈黙するぬかるみ確かめ 拡大鏡のふてぶてしさで破棄した空 ケンムンの木の股をのぼる 滅びている胸

(改稿)


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