今日

布村浩一



子どもたちの叫び声 秋の日の明るい空に届いて ぼくはひっきりなしにコーヒーを飲み ひっきりなしにトイレに行き 今日も寝不足だ 子どもたちの小さなあいさつ 壁や相手の子どもに当たって 小さなワイワイが通りすぎていく 小さなワイワイが流れていく ハガキを出すために一周する道路の 秋の空の下を 黄色い服の子どもが二人 自転車に乗って通りすぎる 秋の空に意味はなかったが ただ青白く 丸く 丸く バックネットや 赤レンガの家が日を浴びていた きみたちの話し声が輪のようにカチンとあたる アパートのよこの平らな地 土の上できみたちのバイバイは回る トイレに行きたい身体 コーヒーを飲みたい身体 畳の上を歩きまわってひとりの足 指の近くで点線がきえる ぼくは今日は声を出す空気になりたい

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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