雨のあと花びらが一枚ガラスに張り付いている
薄い皮膚を透けて見える血管が
女の手を思い起こさせる
見ればベランダの隅に
花びらは溜まっていた
敷居のこちら側に
蛾の死骸が落ちている
人差し指と親指でつまもうとすると
すでにそれはほとんど粉になっていた
翅や鱗粉が日の中に細かく流れる
あの人はたぶん
肋骨を宙に浮かせ
せいせいしているだろう
死者の悪口を言ってはいけないというのは
完全な嘘だ
僕は悪口を言い続けるだろうし
あなたはたぶん僕を覗いているだろう
あなたの死骸も僕の死骸も
日の中に流れることによって 等価だね
そして蛾の死骸もだが
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