みずうみを開ける

布村浩一



うっとおしい日曜日 心の底に石があるようで その石に心が引っ張られているようで 身体が緑の葉や茎の下にある 自分の心のいろんな面を見せてもらって そのことがぼくをもっと暗くする 自分の姿がくっきりと見えてしまうというのはいいことじゃない 窓が緑の葉に囲まれていて 緑の光が窓を匂いづかせて 机の前にすわっていると みずうみの底にいるようだ まだ回りは騒がしくなく 食器のあたる音が聴えるだけ 字が大きく書けない だんだん小さくなって漢字を書けなくなって カタカナで窮状を訴えた ぼくが外をみない間に緑の葉は増えた 身体がずっとケイレンしていて 考えることや感じることができないが これからとにかく回転してみる 食べて 茶を飲んで 読んで 歩いて 葉をちぎって 街をみて 人とすれちがって 会話をきいて 立ち読みして 本をさがして ご飯をつくって ぼくの動いている音の中に カチッという音がきこえるかな

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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