きみの色

長尾高弘



ずいぶん透き通ってきたものだね。 きみは、 自分がどんな色だったか覚えているかい。 色々なやつが、 きみにべたべたとペンキで色を塗って、 お前はこんな色だと騒いでいるけど、 あいつらは、 きみが透き通っていて、 向こう側が見えてしまうことに、 耐えられないだけさ。 もっとも、 そんなおしゃべりは、 きみの耳には、 入ってこないだろうけどね。 それにしても、 あのとききみは、 どんな色になりたかったんだい? 赤、青、白、黒、 それとも金色や銀色? どんな色にしても、 それは、 きみの色じゃないんじゃないかな。 もちろん、 きみは透き通っているわけでもない。 だって人間の色は、 そんなに変えられるものではないし、 変わってしまうものでもないと、 思うんだ。 夏の日ざしを浴びたら、 少し濃くなった自分の色に気付く、 なんていうのは甘いかな? いまきみは、 自分がどんな色になっていると、 思っているのだろうか。

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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