タイトな感情

森原智子



正月ってなぜか消化が悪い 誰かがどこかで決めていることらしい 広い海面に すべての 船は傾いた形をしたまま とどまって見えるが 本当は 少しずつ動いている 薄い服を キリもなしに脱ぐ 舞台のように それが タイトな感情ほど 気味が悪い 枯れ井戸の底で 羽化遂げる 蝶蝶を見た 欠けた月が出る空の下で 渡っていく 一月の五日間が あるようだ 行ってしまう 死んでいってしまうのだ 両性具有の蝶の股間に 不健康な旅が光り 裏海では どこまでも 幻の藻菊が 未生のものを追っていった

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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