夏の秤(1999.6.15)

清水鱗造



風はまだ そこにいる と思う 風はただ休み 木立は黙るけれども 風は木々の作る球に たたずんで 数人の子どものように 丸太に座っている 蓮の葉の照る寺の裏で 汗を拭き カメラを向ける すると 子どもたちは ゆっくり立ちあがり 小さく 小さく伸びをする そしてあなたの痩せた背中を 手のひらで ほんの少し押す それから痩せた背を見る僕に 君たちは笑いながら 葉の音で話し 夏の秤を 贈ってくる

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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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