ゴーレム

丁田杵子



角張った石の連なるアーマー を 取り去ってもやはり石 冷やりとすべらかなおまえの これは生身というのだろうか おまえは汗をかかないから ひたとかぶさったわたくしのどこも渇いたままだよ わたくしの脚が好きなのだね ほら こうしてすぼまる足首は おまえには無いものね 明日も又 裸足で歩いてみせてあげよう さあ わたくしには瞳をのぞかせておくれ 水のような石の瞳 今宵は何が映るだろうね 野分け/竜巻き/地鳴り/山 火を噴く/空 吼える/雨 穿つ/海 呑み込む 死んだ星の瞬き/古のみやこ/ひかりなき水底/予言成就する日/日食の束の間 あめと たいようが あわさるとき にじがかかる(*) おまえのからだはもう十分に熱して ほら 火が映りはじめた 火のなかの影はわたくし 足元から包まれてゆく 火よ 息を吹き込んでやろう 疾く 猛く焦がせ あまねく 石の瞳は水に戻り 縮み上がった屍がひとつ浮かぶとき すべらかなおまえのからだは緩やかに冷めていく おまえはまったく汗をかかなかったから わたくしのどこも渇いたままだよ 冷やりとなるまで 眠るまで 笛を吹いてあげよう ゴーレムは しずかに めをとじる(*)

(*)「ドラゴンクエスト」 ファミコン 86年5月27日発売 容量 512Kbit


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エキスパンドブック版  [98/4/6 朗読会]
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