清水鱗造
坂を下り信号でたばこを吸う 電車には帰りの人々が つり革につかまり こちらの道路を見ている 西には三日月があって ときどき雲でくしゃくしゃになる この路地には骨はない 緑ふかい草と フェンスに絡んだ蔓と実と 抑えきれない火照りの残滓 アート紙に印刷された トカゲの骨 駐車場にボンネットをきらめかせて 車がはいっていく