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われわれの前をゆく橇を倒せ。この間から私の行く手
にある この雪のにおい。雪を運ぶモノ達がしくんだ夜
の満月だ。私は、都市の中でビーカの中の兎の息。横隔
膜のまわりにうすくたよりなくただよう霧の中の草。そ
れらを選り分け、すくい、軒下で豆を煎る。娘は、毬を
かかえ動きだす。男はフライパンを並べてガタガタござ
をひいている。昼は単純なだいだいいろに曇っていた。
今度、私たちの家族に大金がころがりこんだら、この家
にたちこめる うすぎたないモノをみんな追い払って。
団扇でおもいっきり追い出して。かわりに、水色の春風
で迎えようか。ひじき(いいぞ)、れんこん(よし)、
水菜(グッド)、さといも(OK!)、豆腐(ナイス)、
なんぞ呼び込んで、楽しくゆこうではないか。鬼の面そ
うだが、五体満足でなっとくがいく。雪の原でさんざん
ひえきった、心底つめたい我身をかかえ、豆といっしょ
に食べようではないか。今、始まったところ。と、声が
届いた。春に近い声ではない。家のまえのはずれた閂の
音だ。春は不器用にしまってある。
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