4 コントラバス発砲事件


   (忘れものを思い出そうとして)     リボンをほどくと、     ──明日の、       お天気が 変わりそうでした。     ギャフルーン     ギャフルーン     もぐもぐもぐ、     ギャフルーン     ギャフルーン     もぐもぐもぐ、    (スタミナの大地と 遊びの記憶)    (その前方には  ただならぬ海)    (あくびをすると、「ひとさらい」に攫われるよ!) (動物的気配をもり込んでいる)満5歳までの女の子たちにとっては 毎日が祝祭日です。 ──彼女たちの《感情線》はとても深いわ!    (でっかい空が大好きでした)     ギャフ・ルーン     ギャフ・ルーン     もぐもぐもぐ、     ギャフ・ルーン     ギャフ・ルーン     もぐもぐもぐ、     ──「とんぼ」は英語で ヘリコプター?     ──「とんぼ」はやっぱり ヘリコプター    (でっかいスイカも大好きよ!)     ギャフ・ルーン     ギャフ・ルーン     もぐもぐもぐ、    (スタミナの大地と 海の記憶)    (その後方には ただならぬ夜)    (知らないひとに夢の話はいけません!) ──うねる彼女たちの制限時間はいつも満タンなのです。 《海の底にも なにかのタマゴがあるらしい──》     もぐもぐもぐ     もぐもぐもぐ、    (何度読んでも理解できない物語と事件)     ──地の底にも 何かのタマゴがあるらしい     ──「モーリア」は ただの狂女ではない。     * * * * *     ソワソワ・エレガンス     ソワソワ・エレガンス 【レイネの村の伝説の狂女(モーリア)についての、ご質問には 短くお答えいたします】 ──美しい彼女の名前は モーリア なのに、  《生命線》がほぐれかかっている、この女のひとのことを 村人達は  オキチガイと 呼んでいました。     モーリア     モーリア、     モーリリアン、     美女の名前は     オキチガイ。 (17才のモーリアが 気がふれて街からもどってきてから、まだ半年だけれど、 その時から、この村の娘たちの会話が、綺麗になったような気がするのは 不思議だね! ガキどもと、男たちは 別だけれども──)    * * * * * 1953年、 【あの夏の、その日、大人たちは不在でした】     ──まだガキでありました     レイネ・5才は、     はじめてのお留守番をしながら、     戸口のところで、ひとり     スイカを齧っておりました。     ──あの頃の、私の《知能線》はとても正確でした。    (火気注意)    (火気注意)     ──私の底にも なにかのタマゴがあるらしい。     ギャフルーン     ギャフルーン、     もぐもぐもぐ     ギャフルーン     ギャフルーン、     もぐもぐもぐ    (レイネ・レイネの 出来そこないの オヘソが歌います。)     ──知らないひとに電話をかけてはいけません。     ──明日も暑いかなあ、     ──わたくし、ズル休みなどしたことありませんわ!     ソワソワ・エレガンス     ソワソワ・エレガンス 【ふりかえると、戸口に、おんなのひとが 立っていました】    (もちろん、危険物!)     不意の逆光のなかに     はじめて、     モーリアの輪郭を目撃した瞬間、     スイカの種を 3粒も のみこんでしまった     レイネは、     ──だまって オヘソをしまいました。    (モーリアは とてもきれいだわ!)    (火気注意)    (火気注意) 《何かの余波を知っている》  モーリアと 小さなレイネは、     また、     モーリアと 村人達とは     会話によるおしゃべりはありませんでしたが──     アイスクリームがとける、夏の日など、     海岸通りの陽気な場所に     モーリアが不意にあらわれたりすると、 《誰かが、しずかに「恋の話」をはじめるのでした。》 ──どんな女性でも、狂女になれるとは限らない。     * * * * *    (火気注意)    (火気注意)    (忘れものを忘れようとして)     リボンを結ぶと、     ──明日の、       お天気が こわれそうでした。    (左折するよ!) 嵐が過ぎたので── (風のようには、まとわりつかない) モーリアの視線は、 100%無防備のもの、《そのもの》 のみに 向けられていたと、私は確信しております。     ソワソワ・エレガンス     ソワソワ・エレガンス、    (空(そら)の色には、反省の色がない!) 可能性もある・・・・・ ・・・・赤いクレヨン。


(C) Copyright, 1998 AOKI, Eime
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